皆さんこんにちは!
東南アジアの最新ニュースをネットで探していたところ、こんな情報が飛び込んできました。
「ラオス中国高速鉄道が開業!」
この路線は、2016年から5年間の歳月をかけて建設されたもので、中国とラオスの国境「ボーテン」から、古都「ルアンパバーン」を経て、首都「ビエンチャン」までの414キロを結ぶ高速鉄道です。
実は私がタイに住んでいる頃に2回ほど現地を訪れていまして・・。
詳しくは旧ブログの記事を参照ください!
【2020再訪】中国ーラオス国境「ボーテン」の今!高速鉄道の開通まであとわずか
開発が進むラオス〜中国国境「ボーテン」はこんな街だ!本場四川料理に舌鼓を打つ
当時は、開通したらこれに乗って再訪してみたいな〜なんて思っていたのですが、あいにくのことコロナがまだ収束しておらず、タイに戻ることすらできていない状態なので、当分お預け。
せっかくなので、どんな列車なのか、運賃はいくらくらいなのか調べ、私なりに色々考察してみました。
中国ラオス鉄道
中国ラオス鉄道(China-Laos Railway)は、首都ビエンチャンから中国国境ボーテンまでの414キロを、最高時速160km/h、約3時間半で結ぶ路線で、将来的にボーテンから国境を越え雲南省昆明まで乗り入れる計画です。
また、ビエンチャン側の国境からはタイ国鉄東北本線に乗り入れ、いずれはタイの首都バンコクまでを結ぶ予定で、中国が掲げる構想「一帯一路」の一部でもあります。
旅客列車だけでなく貨物列車とも併用されることから、中国南部からラオスを経てタイ東北部へ抜ける物流の新ルートとしても期待されています。
車両
運行は「老中鉄路有限公司」、中国中車製CR200J型電車が新造され、ひとまず2編成が納入された模様。ラオスの国旗にちなんで、赤と青を纏ったカラーリングとなっています。
詳しいダイヤなどは今の所まだ公開されていませんが、片道3時間半の道のりを2編成で賄うということは、おそらく1日2往復くらいの運行でしょうか。
ラオスは元々人口が少ない上、所得水準が近隣国よりも低いため利用できる層が限られるのと、コロナ渦で外国人観光客がほぼいない現状では、本数を増やしても乗車率はあまり伸びないでしょうから妥当なところかと思います。
高速列車の他に普通列車も運行されるとのことですが、おそらく写真右端に小さく写っているのがその車両でしょうか。
高速用の車両側面が「く」の字に折れた形状に対し、右端の車両側面は一直線の形状なので、おそらくそうなのでは?と予想します。普通列車の最高速度は120km/hとのことでした。
線路のレール幅は1435mmの標準軌で、日本の新幹線と同じ規格ですね。安定感があり乗り心地も上々でしょう。
ラオス国内は険しい山岳地帯にあるため、全体47%の区間がトンネルとなっていますが、橋梁や高架区間もそれなりに長いようなので、トンネルの合間に見える景色も気になりますね。
座席の等級は1等車(グリーン車相当)と、2等車(普通車)の2種類とのことです。
こちらが公開された1等車の車内の様子。
座席は2X2の配列で並んでおり、シートピッチも幅もけっこう余裕ありそうですね!
中国の高速鉄道にありがちな、座席と窓の位置がずれている・・というのは、写真をみた感じでは問題なさそうで安心しました。
こちらは、2等車の様子。
3X2の配列は、日本の新幹線や、中国の高速鉄道で採用されているものと同等のようです。おそらくシートピッチなども、新幹線とほぼ同規格なのではないかと予想します。
2〜3時間程度の乗車なので、どちらに乗車しても快適に移動できそうですね。
さっそくYoutube動画が上がっていたので、ご覧ください。
運賃
公式発表の運賃表は、ラオス語と中国語版しかなかったので、日本語に翻訳して作成しました!どうぞご覧ください。
※転載される場合は、当WEBサイト名「あじあ人」記載の上、URL https://asia-jin.com へのリンクをお願いします。
気になる最長距離のビエンチャン〜ボーテン間の運賃は、1等294元(約5200円・1560THB)、2等185元(約3300円・980THB)。日本で比較すると、東海道新幹線の東京〜米原間に相当する距離でこの金額なので、かなり割安感はありますね!
現地の所得水準で考えると随分とお高い印象ですが、今までの交通手段はバスまたは飛行機+バスしかなかったことを考えると、2等車または普通列車に乗車すればそこまで変わらないでしょう。ラオス航空の飛行機と比較したらかなり格安となります。
バスでほぼ丸一日かかっていた所要時間も加味して比較すると、コスパは非常に良いかと思いました。
ただし、今までこのルートをバスで移動していた主な客層は、雲南省に住む中国人と、陸路移動の外国人バックパッカーなんですよね・・・。なので、早くコロナが収束して国境の行き来が自由にならないと、利用客はあまり見込めないかと。
それでも、今後昆明方面への乗り入れが始まれば、今までビエンチャンまで飛行機を利用していた中国人ビジネスマンの需要を十分取り込めるでしょう。
また、観光客に需要があるビエンチャン〜ルアンパバーン間の運賃は、1等174元(約3100円・920THB)、2等110元(約2000円・580THB)となっており、飛行機と比較するまでもなくお手頃な価格設定ですね。ただし、これはあくまでビエンチャンを拠点としてラオスを旅行する場合の話。
もしタイを拠点として、バンコクからルアンパバーンに行くとしたら、LCCのエアアジア直行便を片道5000円台〜の運賃で利用できるので、飛行機の利用が現実的でしょう。
今後列車がバンコクまで乗り入れするようになったとしても、金額・所要時間の両面で飛行機には勝てません。
隣国タイからの観光利用
目覚ましい発展を遂げているタイでは近隣国への観光旅行がブームになっており、高速鉄道沿線にあるルアンパバーンはタイ人が行ってみたい地域にランキング入りするほど人気の街になります。
タイ人がラオスに行く場合、バンコクの富裕層や中間層は航空便を利用するかと思いますが、隣接しているタイ東北部(イサーン地方)の人は直行便が無いため、また近いこともありバスで国境を超える人がほとんどでした。
近年、経済的に出遅れていたイサーン地方、特に「コンケーン」「ウドンタニー」両県に住む個人事業主の所得急増は目を見張るものがあり、特に活気があるウドンタニーはラオス国境まで車で1時間という立地。
もともと農業がメインのイサーンには企業が少なく、仕事の選択肢が少なかったこともあり、バンコクに出稼ぎしていた人が多い地域でした。その後バンコクの経済発展の恩恵を受けて成功した人がUターンして家を立てたり、店を出したりするケースが、ここ数年の間ウドンタニーで急増しているのです。
また地価も高騰しており、親族から相続した土地を、工場用地やコンドミニアム・アパート用地として売却したり、商業の発達に伴い新たに流入してきた人向けのアパート運営で一財産を築いたりと、なかなかの潤いを見せています。
つまり今までは、金銭的にそこそこ余裕の増えたイサーンの人が、ずっと気になっていたラオス・ルアンパバーンまで行くには、ビエンチャンまでバスで移動してから高額の飛行機に乗るか、時間のかかるバスしか交通手段が無いという理由で諦めていたところに高速鉄道が開通したというわけです。
今後コロナが収束して国境が最解放された暁には、ルアンパバーンも週末旅行の候補地に上がるのでは?と思います。
タイへの乗り入れ
ラオスのビエンチャンから離れた位置にタナレーンという既存の駅があります。この駅からはすでにタイのノンカーイ駅との間で普通列車が走っており、3両編成の古い気動車(ディーゼル車)により運行されています。
今までは、タイ方面からの線路はタナレーンが終着駅となっていて、ビエンチャン方面へは繋がっていなかったのですが、今年に入りようやく線路の敷設工事が完了した模様です。
しかし、タイ方面へは国境のメコン川が陸地を遮り、列車は道路と併用している「タイ・ラオス友好橋」を渡るのですが、タイの線路幅は1000mm(ラオスの1435mmより狭い)ため、ラオスからの高速鉄道を走らせるには大規模な改軌工事を必要とします。
また、ノンカーイ〜バンコク間も同様に1000mm規格かつ非電化なのに加え、ノンカーイからサラブリー間に至ってはすれ違いができない単線なので、ラオスから乗り入れするためには新たに高規格の軌道を敷設しなくてはならないなどの課題が山積み。これにより2021年現在では開通の目処が立っていません。
ただ、これを見越した工事が数年前より各地で行われており、バンコク〜ランシット間では都市電車のレッドラインと並走する高架線が完成して、12月下旬には長距離列車の始発駅をバンスー中央駅に移転する予定。
更に、山間部にあるカオヤイ〜ナコンラチャシーマー間では橋梁とトンネルの工事を進め、コンケーン県内ではすでに高架線が完成するなど、少しずつですが動きを見せているようです。
あとは、コロナや反政府デモなどのタイ情勢と、中国との政治の駆け引き次第ですね・・・。
鉄道好きの私としては、早期の実現を祈っております。
駅のアクセスと利便性は?
もう1つ気になるところが、市街地と新駅の位置関係。
日本でもそうですが、高速鉄道の駅って市街地から外れた場所に建てられることが多いんですよね・・。騒音問題や周辺の土地問題および道路環境、また列車の速度を保つためなるべく直線ルートで敷設したいなど、様々な事情があるので仕方ないのですが・・。
これが日本の場合ですと、市街地から離れた場所に高速鉄道の駅があったとしても、それに付随する交通手段として在来線や地下鉄が発達しているためそこまで不便ではありませんが、ラオスの場合もともとそういった交通手段が無いため、おそらくバスやタクシー・トゥクトゥクで移動することになるかと思います。
そこでGoogleマップを使い調べて見たところ、ビエンチャン駅は市街地の中心部から約10キロほど離れた場所に建設された模様。開業に合わせて何かしらの交通手段が用意されるとは思いますが、やや不便ではありますね。
そしてルアンパバーン駅に関しても同様、市街地から12キロ離れた場所に建設されたようです。
おそらくメインの利用者である中国人ビジネスマンや、ラオスの国民はクルマでの送り迎えがあるでしょうから、利用者全体としてはそこまでの不便は感じないでしょう。今後駅周辺が開発されていけばシャトルバスなどが運行されるかも知れませんね。
ラオスは外国人のタクシー・トゥクトゥク運賃が、初乗り350円(100THB)前後〜と周辺国と比較すると割高で、かつ交渉制なので、駅までの距離が遠ければ1000円(約300THB)を超えることも予想されます。
まとめ
今までは、バスで険しい山岳地帯をほぼ丸一日かけて移動するか、何かと手間の多い飛行機に搭乗するしか移動手段が無かったビエンチャン〜ルアンパバーン、そして中国国境のボーテン間を、約3時間半で結んでしまうラオス中国高速鉄道。観光やビジネス需要の掘り起こしから、地域経済への波及効果まで大きく期待できそうですね。
ただし、主な利用層はラオスの自国民よりも、国境を越えてくる中国人や隣国タイからの観光客が多くなりそうなので、本格的な利用客の増加はコロナの早期収束および、雲南省昆明への直通列車の運行が不可欠でしょう。
また、それに付随するラオス国内の都市交通や幹線道路などのインフラ整備も今後の課題となりそうです。
中国としては、タイまで線路を接続させることによって初めて意味を成すとの見方もあるので、あとはタイ側の動き次第とも言えます。
いつかラオスを再訪したら、さっそく乗車してみたいところですね。
以上、ラオス中国高速鉄道開業に関して、以前実際に現地を歩いてみた私の主観も交えてお伝えしました。